今回は日本文化の海外発信について、とても興味深い新聞記事をご紹介します。東京国立博物館参与の阪田徹氏が執筆されている産経新聞の連載コラム「藝術と文化」です。
日本政府はいま、観光産業の活性化を目指して日本の文化・芸術コンテンツの世界展開を進めています。しかし期待したほどの成果は上げられていないようです。阪田氏はその原因を、日本の文化芸術の前提知識(歴史、文化、価値観など)が西洋文化圏でほとんど知られておらず、日本側もそれを体系的に伝えることが不得手であるため、と分析しています。
つまり、コンテンツに魅力がないのではなく「伝え方」に課題があるということです。
知っておくべき「文化・芸術の分類と階層」
国際的(特に西洋)には、文化・芸術に対する明確な分類と階層が存在します。

西洋では、文化・芸術が上の図のように明確に分類、階層化されており、そのターゲットとなる社会層が異なります。
○ハイカルチャー:教養が高く社会的にも強い影響力を持つエリート層にアプローチするための戦略。
○サブカルチャー:広く一般の人々に向けた戦略。
国際競争力に芸術を生かすためには、この両者を混同してしないことがとても重要です。そして、ハイカルチャーを海外に発信し国際競争力を高めるために不可欠なもの――それこそが教養です。
日本の「教養」と西洋の「教養」の違い
日本では「教養」というと、大学の教養科目という名称が典型ですが、専門の入口にあたる学問のように考えられがちです。 しかし西洋では、教養・学術の社会的地位はけた外れに高く、ビジネスや社会の場でも「人間の能力を測る重要な基準」として機能しています。ハイカルチャーやハイアートは、学術的に体系化されることで、西洋のエリート層が重んじる「価値ある教養」となるのです。
では、「西洋で重視される教養」とは何でしょうか。阪田氏は次のように定義しています。
学問の知識などを応用して個人の知性・感性・品性・人格などに反映させ、その内容を言葉で表現し、それが第三者に評価されるまでの総合的な教養的表現力
ここで重要なことは、単に何かを知っていること(インプット)ではありません。知識を他者に評価してもらえるまで説明できる力(アウトプット)こそが、国際的に評価される教養なのです。知識を自分の内面にまで落とし込むには時間もエネルギーもかかります。その上で、日本人が全般的に苦手とするのがこの「アウトプット」でしょう。
文化の産業化は「国の安全保障」になる
阪田氏はコラムの中で、非常に本質的な指摘をされています。
「グローバル化する現代こそ「自国文化・芸術の国際化・産業化は、自国の価値観やアイデンティティー、プレゼンスの維持増進のための安全保障」にすらなりうる」
日本には長い年月をかけて培われた豊かなハイカルチャーが存在します。これを国を挙げて体系化し、戦略的にアウトプットできれば、それは確実な安全保障になります。軍事力の強化以上に、文化の力で国を守り、存在感を高めることは、これからの時代において極めて重要なことではないでしょうか。
「ことさきく」プロジェクトが目指す未来
私たち「ことさきく」プロジェクトは、グローバル英語の確立を目指しています。まさにこのアウトプットという観点から、
○教養を日本語で的確に要約、説明し、
○それをグローバル英語で発信できる人を育てる。
それが「ことさきく」の究極の目的です。
以上、今日のつぶやきでした。
(運営スタッフ:髙橋)
参考資料:
阪田徹.「文化芸術の地位が低い日本 「無関心」前提に現状打破を」『産経新聞』.2026-1-21, https://www.sankei.com/article/20260121-JICOBQ5VSRMQNI3KRHJJDK33X4/ (閲覧日2026-6-29)
阪田徹「西洋富裕層の知的成長欲求を満たす文化・芸術の『説明力』」産経新聞2026-2-18, https://www.sankei.com/article/20260218-SOOIIOBC4NKLVOSOBUTNUJWWIQ/ (閲覧日2026-6-29)
阪田徹「クローバル化した現代 文化の産業化は国の安全保障になる」産経新聞2026年4月15日付, https://www.sankei.com/article/20260121-JICOBQ5VSRMQNI3KRHJJDK33X4/ (閲覧日2026-6-29)
