05. 大村益次郎は至高の翻訳者

こんにちは。「ことさきく」運営スタッフの髙橋です。

こちらの「つぶやき」コーナーでは「ことさきく」運営スタッフ――全員成瀬先生の弟子です――が先生の難しい理論をわかりやすく、それぞれの感想を交えながら解説しています。

ちょうど1年前、大学の恩師への年賀状に「翻訳者になります」と書きました。

そうしたら「私の大学時代の友人の本を読むといい」と山岡洋一『翻訳とは何か――職業としての翻訳』(日外アソシエーツ、2001)を勧められました。

「知らないことは翻訳できない」、「辞書で訳語を探すな」など、反省したり、肝に銘じたりしながら読みました。成瀬先生に言われていることと同じことです。

この本の「歴史のなかの翻訳家」という章で、洋の東西を問わず歴史上の翻訳者が取り上げられています。その中から今回は大村益次郎について書かせていただきます。参考文献は山岡氏も挙げられている司馬遼太郎『花神』(新潮文庫)です。

大村益次郎、本名 村田蔵六は医者の息子で大阪の適塾で蘭学を身につけます。時代は幕末、医学より欧米流の近代兵学が求められるようになり、その蘭学の知識を買われて宇和島藩、幕府で兵書を翻訳、そして故郷の長州藩では西洋へ医学を教えるとともに兵制改革を行うようになります。

つまり武士ではなく、刀も振れず、馬にも乗れず、日本古来の兵学の知識もなかった人が、オランダ語で書かれた兵書を翻訳するなかで兵学を身につけ、それを実践して彰義隊を殲滅させます。戦場で戦ったのは西郷や大久保といった、ドラマなどでもおなじみの面々ですが、その裏で作戦を練っていたのは村田蔵六だったのです。それも翻訳で身につけた兵学の知識だけで。

蔵六は兵書を翻訳しているときに目の前に歩兵が動く情景が浮かんだと、司馬遼太郎は表現しています。

これこそが翻訳者の理想の姿なのだろうと思います。原文を何度も何度も読み、頭の中で日本語が8割方できあがったところで一気に書くべし、と、成瀬先生にも教わりました。

司馬遼太郎『花神(上・中・下)』(新潮文庫)は翻訳者だけでなく語学を学習する人にも必読書です。

語学を学ぶ目的は何か、語学を学ぶことそのものではないはずです。
その先に何がしたいのか。それを考えると学ぶことが楽しくなるのではないでしょうか。

以上、今日のつぶやきでした。

(運営スタッフ:髙橋)

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