14. 日本の文化・芸術コンテンツの発信について考えてみた - その2

こんにちは。「ことさきく」運営スタッフの髙橋です。

前回は日本の文化芸術を「ハイカルチャー」と「サブカルチャー」に分類し、ターゲットを絞ってアウトプットすることの重要性について取り上げました。(13. 日本の文化・藝術コンテンツの発信について考えてみた - その1)

今回も東京国立博物館参与・阪田徹氏の産経新聞コラム「藝術と経済」をヒントに、「日本のハイカルチャーの価値」について私自身の経験を交えながら深掘りしていきたいと思います。

西洋のハイカルチャーには共通の土台がある

ヨーロッパや米国には、キリスト教やギリシャ文明、ルネサンスなど、共通の歴史・文化の土台があります。そのため、多くを説明しなくてもお互いに理解し合えるところがあります。

しかし日本と西洋の間には、宗教、歴史、価値観の共通点がほとんどありません。つまり、私たちが思っている以上に、西洋の人たちは日本について何も知らないのです。

西洋人の目には、日本側の説明が単なる「事実の列挙」か「軽薄なポエム」のように映ってしまっている。これは「情報・説明面におけるホスピタリティの欠如」である。

心当たりがありすぎて、ドキッとします…。「相手の視点に立った体系的な説明(アウトプット)」ができていないことこそが、国際発信の最大の弱点なのです。この質を高めるには、まず私たち日本人が、自国の歴史と文化の本当の価値を正しく認識し直さなければなりません。

固有のハイカルチャーを持つ国は少ない?

阪田氏の記事を読んで私が強く感じたのは、世界を見渡しても、独自の『ハイカルチャー』をこれほど豊かに持っている国はそう多くないということです。

ここでのハイカルチャーとは、単なる「一部の富裕層の道楽や趣味」ではありません。長い歴史の中で、数え切れないほどの人々の情熱と厳しい修行によって営々と支えられ、磨き上げられてきた国宝級の無形資産です。茶道、華道、能楽などのハイカルチャーやハイアート、それと密接に関連した応用芸術。これらは、好き嫌いという個人の主観を超えた「多様な機能性や効用」(阪田氏、1/21付け産経新聞)を持っています。

これらを西洋の知的欲求に応えられるような「ロジック」として要約し、提示していくこと。これこそが、これからのグローバル発信に必要なアプローチです。

茶道を習って知った「日本文化のポータルサイト」

私は31歳の頃に裏千家茶道を習い始めました。自分の師匠のほかに、ときどき御家元のもとで厳しい修行を積まれた「業躰(ぎょうてい)」と呼ばれる先生方から直接ご指導をいただく機会があります。業躰先生方の一挙手一投足を見ていると、「こういう方々がその道を何百年も営々と支えているのだ、これがハイカルチャーなのだ」と実感します。まさに、一朝一夕には決して出来上がらない世界です。

業躰先生方にご指導をいただくと、自分の「美しさ」や「丁寧さ」に対する感覚がいかに鈍く粗雑であるかを思い知らされます。それは、現代の慌ただしい生活の中で失われている「昔の日本人の研ぎ澄まされた感覚」を呼び覚ます貴重な機会でもあります。

裏千家坐忘斎御家元は茶道のことを「日本文化のポータルサイト」と表現されています。お茶を通して、建築、陶芸、歴史、文学、食文化など、あらゆる日本文化の入り口に触れることができるのです。

ちなみに、歴史好きの人には特に茶道の稽古をお勧めします!
「秀吉の小田原城攻めのときに利休さんが茶道具を入れて持って行った旅箪笥(たびだんす)」といった、歴史のドラマが詰まった道具を使って稽古することもあります。道具や点前を通して室町時代や戦国時代、江戸時代がすぐ目の前に感じられて、とても楽しいですよ。

グローバル社会で勝つための最強の武器

能や華道、舞踊などの世界も、同じように厳しい修行を積んだ方々が支えているはずです。

できるだけ多くの日本人に、こうしたハイカルチャーにつながるものを何か一つでも稽古して、その深淵をのぞいてみていただきたいです。

なぜなら、ハイカルチャーは国際社会で最も強い影響力を持つ主要国エリート層をターゲットとしており、サブカルチャーより総じて強い影響力を持つからです。これを価値ある資産として、日本の国際競争力を強化するために活用しない手はありません。

数年前、私の師匠のところに高校生の男の子が入門してきたことがあります。

その青年曰く、「茶道が好きなわけではないけれど、将来外交官になりたいので日本文化について知っておきたい。そのためには茶道がいいと思った」と。

なんと素晴らしいことだと思いました。こういう高い視座を持つ若者が増えれば日本の未来は明るいと思います。

(政治家と国家公務員には、全員にこうしたハイカルチャーの稽古を義務付けるというのはどうでしょうか?もちろん自腹で。)

英語を学ぶ私たちが、今やるべきこと

どれだけ流暢な英語を話せても、「語るべき中身(バックボーン)」がなければ、グローバルな舞台で対等に渡り合うことはできません。語学はアウトプットのためのツールに過ぎません。

「日本の教養を深く理解し、それを的確に要約し、グローバル英語で世界へ堂々と発信できる人」を育てること。

それが「ことさきく」プロジェクトの究極の目標です。

皆さんも、まずは身近な日本文化の扉を一つ、叩いてみませんか?

以上、今日のつぶやきでした。

(運営スタッフ:髙橋)

参考資料:
阪田徹.「文化芸術の地位が低い日本 「無関心」前提に現状打破を」『産経新聞』.2026-1-21, https://www.sankei.com/article/20260121-JICOBQ5VSRMQNI3KRHJJDK33X4/ (閲覧日2026-6-29)
阪田徹「西洋富裕層の知的成長欲求を満たす文化・芸術の『説明力』」産経新聞2026-2-18, https://www.sankei.com/article/20260218-SOOIIOBC4NKLVOSOBUTNUJWWIQ/ (閲覧日2026-6-29)
阪田徹「クローバル化した現代 文化の産業化は国の安全保障になる」産経新聞2026年4月15日付, https://www.sankei.com/article/20260121-JICOBQ5VSRMQNI3KRHJJDK33X4/ (閲覧日2026-6-29)

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