英語発音学習に対するアドバイス(5)ネイティブ英語発音の完全マスターを目指してはいけない

若いころに出会った一人の英語学習者が口にした次の言葉を私はいまでも覚えています。

「私は一生かけても英語ネイティブ発音をマスターしてみせます」

私は絶句しました。

彼女がいった言葉は「私は一生かかっても東大に入学してみせる」というのとほぼ同類の言葉です。何歳になろうともに東大入学ならぬネイティブ英語発音獲得を目指すと彼女はいったのです。

世の中には他人からみるとまったく価値のないものに情熱を持ち続けている人がいます。それがなんであれ、生涯にわたって打ち込める対象を持てることは素晴らしいことですし、それが簡単に持てないから多くの人が悩んでいます。その意味では、一生をかけて英語ネイティブ発音をマスターするといった彼女は、若い時に一生のいきがいを手にいれたともいえます。

けれども彼女の言葉を聞いた時、私はそうした彼女の英語学習のあり方を応援する気にはなれませんでした。彼女の言葉を聞いて私の頭に最初に浮かんだ言葉は「痛ましい」でした。そして彼女になんの返答もできませんでした。

当時の私は彼女の言葉に絶句するしかありませんでしたが、いまは違います。それから半世紀近くの英語との苦闘を経た現在の私であれば彼女に対して次のようにアドバイスすることができます。

「やめておきなさい。それは人生を無駄にすることです。私たちは日本人なのですから、日本人アクセントのある英語発音をマスターできれば、それで十分です。それよりも、わかりやすくてロジカルで内容が豊かな英語を話したり書いたりできる能力を身につけなさい。それこそが英語学習での一生の目標となるものです。」

(ことさきく|「大きな日本人」を育てる!より)

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